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労災隠しとは?行われる理由や罰則について解説

2023年11月30日

勤務中や通勤中にケガや仕事が原因となって発症した病気は労働災害(労災)です
労災が発生したら、労働基準監督署に報告しなければなりません。
しかし、報告を怠る、虚偽の報告をする事例がしばしばあります。
労災隠しは、違法行為です。

今回は、労災隠しの内容や起こる理由などを紹介します。

労災隠しとは?行われる理由や罰則について解説

労災隠しとは何か

労災隠しとは、労働災害が発生したのに会社が労働基準監督署へ報告しなかったり、虚偽の報告をしたりする行為です。
労働災害が発生したら、所轄の労働基準監督署への報告が義務づけられています。
しかし、さまざまな理由から労働災害が発生しても労働基準監督署へ報告しないケースはあとをたちません。
また、労災が発生した際に「あなたは非正規雇用だから事故をおこしても労災に該当しない」「労災を報告したら会社が立ちゆかない」などと言って従業員に隠匿を強要するケースもあります。

労災隠しは、れっきとした違法行為です。
また、労働災害が発生した際に備える労働保険は、雇用者が1人でもいれば雇用主に加入義務があります。
雇用形態は問わず、パートやアルバイトなど非正規雇用が労働災害の当事者になった場合も報告が必要です。

なぜ労災隠しが起こるのか?

ここでは、なぜ労災隠しが起こるのか、その理由を3つ紹介します。
労働災害が発生すると会社の責任が追及されたりいろいろな手続きが求められたりするため、隠したい経営者も珍しくありません。
しかし、労災隠しを行なっていたと発覚した方が、会社にとってもダメージは大きくなります。

労働保険料が上がる可能性があるため

労働災害が発生し、労働保険で治療費や休業補償を支払うと労働保険料が上がると思っている方もいます。
そのため、保険料の値上がりを恐れて労災を隠そうとするケースもあります。
しかし、労働保険を使ったために保険料がアップするケースは、雇用している従業員が100名以上など、一定の条件を満たした場合だけです。

また、通勤中に交通事故に巻きこまれた場合などの、通勤災害が発生して報告をしても保険料は上がりません。

したがって労災隠しを行なうデメリットの方が大きなため、必ず労働基準監督署へ報告してください。

会社の評判やイメージが下がるため

労災隠しが起こる最も多い理由が会社の評判やイメージの低下を防ぐためです。
労働災害の内容によっては、会社の評判やイメージが低下するケースはあります。
労災発生を理由に、契約を打ち切られる場合もあるでしょう。

しかし、労働災害発生より労災隠しをしたとあとで判明した方が、会社にとっては大きなダメージとなります。
労働災害の中には、対策を取っていても発生してしまうものもあります。
労災隠しは、会社が故意に行なわなければ発生しません。
「あの会社は都合の悪いことは隠す」といった評判が広まれば、信用を回復するまでに長い時間がかかるでしょう。

労災未加入のため

従業員が1~2名の零細企業の場合、労働保険に未加入の場合があります。
これはれっきとした法律違反で、非常に悪質な行為です。
労働基準監督署に報告すれば保険の未加入が発覚するため、なんとか隠そうとするケースもあります。

前述したように、労働保険は形態にかかわらず1名以上の従業員を雇用している場合は加入が必要です。
労働保険に加入していないような悪質な会社の場合、ほかにも法律違反をしている恐れもあります。

労災隠しをしていた場合の罰則は50万円以下の罰金

会社が労災隠しをしており、発覚した場合の罰則は労働安全衛生法違反で50万円以下の罰金です。
逮捕はありませんが、書類送検は行なわれます。
労災隠しが悪質であったり、会社の知名度が高かったりしたらニュースなどで放送される可能性もあるでしょう。
会社の信用は大きく損なわれ、回復までに長い時間がかかります。

なお、労災隠しが行なわれた場合、責任が問われるのは会社です。
労災の当事者となった従業員ではありません。
しかし、従業員に労災に関する知識がないと、労災が起こっても現場が報告しない「意図しない労災隠し」が起こる可能性もあります。
労災が発生するリスクの大小にかかわらず、従業員への教育も重要です。

労災隠しは労働基準監督署に相談を

労働災害が発生したのに、会社が理由をつけて労働基準監督署に報告しなかった場合や、仕事由来のケガや病気を「労働災害」と認めてくれなかった場合は、所轄の労働基準監督署に相談してください。
発生した事故や病気が労働災害にあたるかどうかを判断するのは、労働基準監督署です。
会社が認めてくれなくても労働基準監督署が認めれば労災です。

また、労働災害のケガや病気の治療は、全国の労災保険認定病院で行ないましょう。
後々の手続きが楽になり、治療費の建て替えも発生しません。

まとめ

労災は、対策をしても発生する可能性があります。
労災が発生しても、会社が法律に沿って労働基準監督署に連絡して再発防止に努めれば問題ありません。
しかし、労災隠しをすれば再度同じような労働災害が発生する恐れもあります。
会社に治療費等を負担してもらうなどしても、労災隠しは帳消しになりません。
会社が勤務中に発生した事故や、仕事由来の病気を労災と認めてくれない場合は、早めに最寄の労働基準監督署に相談しましょう。