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労災で健康保険が使用できない理由 基本の仕組みや間違った際の対応

2023年02月10日

労災で病院を受診する際、普段の癖で健康保険証を出してしまう方は少なくないかと思います。
しかし、労災で受診したのに健康保険を使用してしまうと労災の利用はできません。

本記事では、労災で健康保険が使えない理由と対処方法、労災の補償について解説します。
労災で受診する予定がある、間違って健康保険証を出して切り替えが必要な方は、ぜひ最後までご覧ください。

労災で健康保険が使用できない理由 基本の仕組みや間違った際の対応

労災で健康保険が使えない理由とは

「健康保険制度」と「労災保険制度」は根拠となる法律が異なります。
健康保険は「健康保険法」に基づいた制度で、業務外に起こったケガなどに対して適応されます。

一方で労災保険は「労働者災害補償保険法」に基づいた制度です。
勤務中や通勤途中に起こったケガなどに対して適応されるため、どちらの保険を使うかは起こった状況が判断のカギとなります。

大したケガではないからと健康保険で受診する方もいるかもしれませんが、ケガの大小にかかわらず仕事中や通勤途中に起こったケガは労災の対象であり、健康保険の利用は認められていません。

また正社員ではないパートやアルバイトの方も、労災が使えます。
労災の対象は「労働中、または通勤中にケガをした労働者」であると覚えておきましょう。

労災で健康保険を間違って使った場合の対応方法2パターン

労災で受診したのに、間違って健康保険を使用してしまった場合は保険の切り替え手続きが必要です。
手続きが受診した病院に「間違って健康保険を使用してしまった」と伝え、病院で労災への切り替えができるか確認をとりましょう。

1.病院で保険の切り替えができる場合

受診した病院で労災保険への切り替え手続きができる場合は、窓口に必要書類を提出しましょう。
労災保険を利用する際に必要な書類は、以下のとおりです。

● 【仕事中のケガの場合】療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)
● 【通勤中のケガの場合】療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)

労災保険給付関係請求書等のダウンロードはこちらから|厚生労働省

必要書類を提出すると、健康保険使用時に支払った料金を返金してもらえます。
病院で保険の切り替えができる場合、さほど面倒な手続きはありません。

2.病院では保険の切り替えができない場合

病院では労災保険への切り替えができない場合は、医療費を一旦すべて立て替える必要があるうえ、手続きがやや面倒になります。
手続き内容は以下のとおりです。

1. 加入する健康保険の保険者に、間違って健康保険を使用した旨の連絡を入れる
2. 健康保険の保険者から以下の書類が届く
● 医療費の返還通知書
● 診療報酬明細書
3. 以下の書類をそろえて労働基準監督署へ提出し手続き完了
● 健康保険使用時に支払った自己負担分の領収書
● 療養補償等給付たる療養の費用の支給関係(様式第7号または様式第16号の5)

労災保険給付関係請求書等のダウンロードはこちらから|厚生労働省

上記の手順を踏むと手続きが完了となり、書類が確認されると労災保険から治療費が振り込まれる流れとなります。
しかし必要書類の請求には時間を要し、長いと3か月ほどかかるため、労災での受診時は保険を間違えないように気をつけるのが一番です。

労災保険は健康保険に比べて補償が手厚い

労災保険は健康保険に比べて、幅広い補償内容が魅力です。
大したケガではないと、労災を隠して健康保険を使用すると、手厚い補償が受けられずにあとから何かあっても対応できません。

ここでは、労災保険の補償内容について紹介します。

1.治療費の全額補償

最もメジャーな補償内容は、治療費の全額補償です。
勤務中の事故だけでなく、通勤中の事故も労災保険の対象となります。

必要書類を持参して労災指定病院を受診すれば、その場で医療費を支払わずに治療が受けられ手続きがスムーズです。
できるだけ労災指定病院を選んで受診するとよいでしょう。

2.休業が必要な期間の補償

労災事故が原因で仕事ができずに休業し、賃金を受けとっていない場合に適応される補償です。
休業直前3か月分の賃金総額を日割りした金額(給付基礎日額)の6割が、休業した日数分給付されます。

また社会復帰支援として、休業特別給付金といった制度もあります。
休業1日につき給付基礎日額の2割が支払われるため、合計すると給付基礎日額の8割にあたる補償を受けられる手厚い補償です。

3.後遺症が残った際の補償

労災事故のケガや病気が治ったあと、身体に障害が残った場合に適応される補償です。
障害の程度によって、大きく2種類にわけられます。
これにより、給付金の内容が異なります。

4.死亡時の補償

労働または通勤が原因で死亡した場合、労働者の遺族に対して適応される補償です。

● 遺族年金
● 遺族一時金

上記2種類の給付金があり、死亡した労働者の収入で生計を立てていた配偶者や子どもなどが受給資格者となります。

まとめ

労災で病院を受診した場合、健康保険の使用はできません。
間違って使用してしまった場合、一時的に支払いが生じたり面倒な手続きをしたりしなければなりません。

労災時はできるだけ労災指定病院を選び、手続きがスムーズに進むように必要書類はそろえて受診しましょう。
また小さなケガであっても、労災の場合は補償の手厚い労災保険を使用すれば後々悪化した場合なども安心です。

渡邉社会保険労務士事務所では、多くの企業でトラブルの起こりやすい原因を事前にチェックし、トラブルを未然に防ぐご提案をしています。労災保険手続きの代行も行っておりますので、お気軽にご相談ください。