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労働条件通知書と雇用契約書の違い | 知らないと損する注意点

2025年10月03日

転職や就職の際、必ず目にするのが「労働条件通知書」と「雇用契約書」です。

どちらも労働条件を確認するための書類ですが、実はその性質や法的な効力には明確な違いがあります。
違いを理解せずにサインをしてしまうと、不利な条件を受け入れてしまったり、後々トラブルに発展することも少なくありません。

本記事では、両者の位置づけや主要な違い、確認時に押さえるべき注意点をわかりやすく解説します。

労働条件通知書と雇用契約書の違い|知らないと損する注意点

「労働条件通知書と雇用契約書|違いを押さえて何を確認すべきか

就職や転職の際、必ず手にすることになる「労働条件通知書」と「雇用契約書」。
どちらも労働条件を示す書類であるため混同されがちですが、実際にはその役割や法的効力は大きく異なります。

違いを理解していないまま署名・提出してしまうと、後々「思っていた条件と違う」「労働トラブルに巻き込まれた」という事態に発展しかねません。

ここでは、両者の制度上の位置づけや確認のポイントを整理し、入社前に注意すべき点を解説します。

制度の位置づけ

労働条件通知書は、労働基準法第15条に基づいて交付が義務付けられている書類です。
企業は労働者を採用する際、労働時間・賃金・休日などの労働条件を明示しなければなりません。
このとき、口頭で伝えるだけでは不十分であり、書面もしくは電子媒体での交付が必要です。

一方で雇用契約書は、労働契約法に基づいて労使間で取り交わされる契約書です。
これは義務というよりも、労働者と使用者双方が「同じ条件で合意していること」を確認するためのものと位置づけられます。

つまり、労働条件通知書は会社から一方的に交付される文書であるのに対し、雇用契約書は双方の署名や押印を伴う双務的な契約文書です。

主要な違い

両者の主な違いを整理すると以下の通りです。

・作成の目的:労働条件通知書は労働者に条件を明示するため、雇用契約書は労働条件について双方が合意したことを記録するため

・交付の義務:労働条件通知書は法律で必須、雇用契約書は必須ではないが実務上は取り交わされることが多い

・署名の有無:労働条件通知書は会社側が作成し交付、雇用契約書は労使双方が署名または押印

つまり、労働条件通知書が「最低限の法的義務」であるのに対し、雇用契約書は「合意を証明する補強資料」としての意味合いが強いと言えます。

法的効力の違い

労働条件通知書は法律上交付義務があるため、交付がない場合や記載内容に不備がある場合、会社は行政指導や罰則を受ける可能性があります。
ただし、労働条件通知書そのものには「契約としての拘束力」はありません。

一方、雇用契約書は民法上の契約文書として効力を持ちます。
署名押印された契約書は「当事者間の合意」を裏付ける証拠となり、労働トラブル時には非常に重要な証拠資料となります。
したがって、同じ労働条件を示す書類であっても、効力や位置づけには大きな違いがあります。

確認時のチェックリスト

入社前に確認すべきポイントは以下の通りです。

1.賃金(基本給・手当・残業代の計算方法)

2.労働時間(始業・終業時刻、休憩時間、時間外労働の有無)

3.休日・休暇(日曜・祝日、年次有給休暇の扱い)

4.契約期間(有期雇用か無期雇用か)

5.試用期間の有無と条件

6.契約解除(解雇や退職に関する取り決め)

これらの条件を「通知書」と「契約書」で突き合わせて、相違がないか確認することが重要です。

よくある誤解

多くの労働者が抱く誤解として、「労働条件通知書があれば雇用契約書は不要」というものがあります。
確かに通知書は法的義務ですが、雇用契約書がなければ労働条件をめぐる争いの際に「本当にその条件で合意していたのか」が不明確になります。

また、口頭で説明された内容が通知書や契約書に反映されていないケースも少なくありません。
書類の整合性を確認し、必ず手元に控えを残しておくことが大切です。

交付時に確認すべき記載事項

労働条件通知書や雇用契約書を受け取ったときに、特に注意すべき記載事項について解説します。

交付義務の範囲

会社はすべての労働者に対して労働条件通知書を交付する義務があります。
正社員だけでなく、アルバイト・パート・契約社員も対象です。

短期間の雇用であっても、労働条件の明示は省略できません。
もし交付されなかった場合は、労働基準監督署に相談することも可能です。

記載必須項目や電磁的方法の取り扱い

労働条件通知書には、労働基準法で定められた必須項目があります。
たとえば、賃金額・労働時間・休日・契約期間・就業場所などです。
これらが明記されていない通知書は不備があると見なされます。

また、近年は紙の交付に加え、電子メールやクラウド上での交付も認められています。
ただし、労働者が内容を確認・保存できることが条件となるため、単なる口頭説明や一時的な閲覧のみでは不十分です。

トラブルを未然に防ぐ対応

トラブルを防ぐためには、通知書や契約書を受け取ったら以下を徹底しましょう。

・内容を熟読し、不明点は必ず質問する

・書面に残っていない条件は確認し、可能であれば文書に追記してもらう

・自分用にコピーやデータを必ず保管する

このように、書類をただ受け取るだけでなく、主体的に確認・保存する姿勢が重要です。

まとめ|重要ポイントの要約

労働条件通知書と雇用契約書は、いずれも労働条件を示す重要な書類ですが、その役割と法的効力は異なります。
通知書は会社が一方的に交付する義務があるもので、契約書は労使双方が合意を確認する文書です。

両者をきちんと突き合わせて確認することで、後のトラブルを未然に防ぐことができます。
入社前には、必ず給与・労働時間・休日などの条件を明確にし、通知書と契約書に不一致がないかチェックしましょう。
そして、控えを必ず手元に残すことが、安心して働き始めるための第一歩です。